
2026年6月13日(土)〜14日(日)に岩手県盛岡市の「マリオス・盛岡市民文化ホール」にて開催された『第74回 日本医療ソーシャルワーカー協会全国大会 / 第46回 日本医療社会事業学会(岩手大会)』に当事業所の小瀬古が登壇し、講演をさせていただきました。今回は、その学会での発表内容や現地の様子について、ご報告いたします。
講演テーマ:「ウェルビーイングを支える対話実践」
今回の講演では、私たちが日々の訪問看護の中で最も大切にしている「対話(ダイアローグ)」を切り口に、精神疾患をもつ方々のウェルビーイングを地域でどのように支えていくか、というテーマでお話ししました。
現在、精神疾患を抱える患者数は増加傾向にあり、心の不調は誰もが当事者となりうる社会全体の課題となっています。そうした中で、単に「病気ではない状態」を目指すのではなく、肉体的・精神的・社会的に満たされた「ウェルビーイング(健康)」を実現するためには、支援における「対話のあり方」を見直す必要があります。
1. 「コミュニケーション技術」から「対話」への昇華
医療や福祉の現場では、しばしば「AならばB」といった因果関係やマニュアルに沿った情報伝達(モノローグ的な関わり)に終始してしまいがちです。 例えば、利用者様からの「死にたい」「眠れない」という訴えに対して、単にリスク管理のデータや睡眠障害の情報として処理してしまうのではなく、その言葉の背景にある孤独や苦しさを生身の人間として受け止め、血の通った「声」として語り直すプロセス(言葉の受肉)が不可欠です。
2. 「分からなさ」に留まる力(ネガティブ・ケイパビリティ)
支援者はどうしても性急に答えや解決策を求めてしまいがちですが、相手の言葉と自分の内側の声を拙速に整理せず、分からなさの中に留まり続ける姿勢(ネガティブ・ケイパビリティ)こそが、対話逆の関係の本質であるとお伝えしました。
3. 権威勾配を乗り越え、「ともに(Withness)」歩む関係へ
データによると、大多数の患者様が過去に少なくとも1つは「医学的に重要な情報」を医師や支援者に伝えていない実態があります。これは、支援者側が何気なく発した言葉や質問が、本人にとっては「ジャッジ(評価)」や「脅威」に感じられ、優位な立場にある支援者に忖度してしまう(権威勾配の影響)からです。
客観的に分析・管理する「〜について(Aboutness)」の関係から、対等な目線で共に悩む「〜とともに(Withness)」の関係へ。
そして、支援する側・される側という固定化された枠組みを超え、お互いが等身大の人間として成長し合う「ケアの相互性」の循環を作ることの重要性を、ミハイル・バフチンやトム・アンデルセン、ミルトン・メイヤロフの思想を交えながらお話しさせていただきました。
岩手での温かい出会いと、少しの裏話
学会会場となった盛岡市は、美しい自然に囲まれたとても素敵な街でした。全国から集まった熱意あふれるソーシャルワーカーや医療関係者の皆様と直接お会いし、実践の悩みを共有し合えた時間は、私にとっても大きな学びと刺激になりました。
そして、岩手といえば美味しい食文化も外せません!
滞年中には、平泉の「芭蕉館」にて名物のわんこそばをいただいたり、現地の歴史ある寺院を巡ったりと、岩手の豊かな文化に触れて心身ともにエネルギーをチャージすることができました。
おわりに
私たちはこれからも、専門職としての確かな技術を磨きつつも、目の前の一人の人間として利用者様と「ともに」歩む対話実践を続けてまいります。
最後になりますが、大会を運営してくださった関係者の皆様、そして発表を温かく聴いてくださった皆様に心より感謝申し上げます。