この時期は各地で職能団体の総会が開催されていますが、2026年6月20日に開催された「公益社団法人日本精神保健福祉士協会大阪府支部 第20回総会」にて、当事業所の精神保健福祉士・谷所が議長という大役を務めさせていただきました。
また、総会に合わせて開催された記念講演では、武庫川女子大学の大岡由佳先生をお招きし、「トラウマインフォームドケア(TIC)」をテーマにお話を伺いました。大岡先生は犯罪被害者支援の第一線で活躍され、アメリカでもTICを深く学んでこられた第一人者です。
今回は、この講演を通じて改めて得た気づきや大切な学びを、皆さまにシェアしたいと思います。
トラウマを正しく理解し、回復する力を信じること
トラウマインフォームドケア(TIC)については、これまでも様々な研修で触れてきましたが、今回の講演でより一層理解が深まりました。
つらく悲惨な経験は、本人にとって自分自身を圧倒するような衝撃的な出来事となります。それを自分の中で意味づけたり処理したりできないままでいると、トラウマとして長期的な影響を及ぼすことがあります。
また、子ども時代の精神的ストレスが、「髄鞘(ずいしょう)形成」や「神経シナプス形成」といった脳の発達そのものにも大きな影響を与え得るというお話は、非常に印象的でした。
一方で、今回の講演では、子ども時代の逆境体験(ACE)だけでなく、ポジティブな小児期体験(PCE)の大切さも紹介されました。
▼ 大切なポジティブな小児期体験(PCE)
- 安心できる居場所があること
- 信頼できる大人が存在すること
こうしたポジティブな体験や環境こそが、有害なストレスを和らげ、回復を促す力になります。トラウマによる影響(困難さ)だけを見るのではなく、その人が持つ強みや回復する力(レジリエンス)にも目を向けること。
そして支援者自身が「トラウマからの回復は可能である」と信じて関わることの大切さを、改めて強く実感しました。
支援者と組織を守る「安全性」、そしてハード面の配慮
最近の関心事でもある「支援者が受けるトラウマの影響」についても、非常に興味深いお話がありました。
支援者は、目の前の方に共感して深く関わるからこそ、二次的に傷つくことがあります。それ、その傷つきは支援者個人に留まらず、組織全体にも影響を及ぼします。当事者の方はもちろんのこと、支援者にとっても身体적・心理的に安全・安心で、困ったときにはいつでも助けを求められる組織であることが不可欠なのだと学びました。
また、今回は「トラウマインフォームドデザイン(TiD)」という視点も紹介されました。これは建物や空間などのハード面からもトラウマに配慮するという考え方です。
障がいのある方にとって使いやすい環境やデザインを考えるユニバーサルデザインの視点にも通じるものであり、「まったく新しい考え方」というよりは、「空間づくりにおいても、同じように安全・安心を徹底していくのだ」という新鮮な気づきに繋がりました。
TICはソーシャルワークそのもの
今回の講演を振り返ると、TICとはトラウマを治療するための何か特別な技法というよりも、「私たちが普段どのように人と関わり、どのような環境や関係性をつくっていくのか」を問い直す内容だったように思います。
当事者だけでなく、支援者や組織も含めて安全・安心な場をつくり、人と人、人と制度、人と環境の関係を整えていく――。
それはまさに、私たち精神保健福祉士の専門性である「ソーシャルワーク」そのものです。TICは、日々の支援や組織のあり方を見直すための大切な「実践基盤」なのだと感じました。
総会を終えて
今回の総会では、冒頭にお伝えした通り議長という大役を務めさせていただき、大変貴重な経験となりました。
この講演で得た深い学びをしっかりと日々の実践と組織づくりに活かし、これからも誰もが安心できる関わりと環境づくりに努めてまいります!