日本精神保健看護学会 第36回学術集会・総会に参加しました

2026年7月18日(土)・19日(日)の2日間、北海道札幌市で開催された「日本精神保健看護学会 第36回学術集会・総会」に、トキノ株式会社より精神看護専門看護師の中村と認定看護師の木下が参加いたしました。

学会の概要と今大会のテーマ

日本精神保健看護学会は、精神保健看護の学術の発展と人々のメンタルヘルスへの貢献を目的とする国内最大規模の学術団体です。全国から当事者、ご家族、看護師をはじめとする医療・福祉職、教育・研究者が集い、実践や研究を共有しながら精神保健看護の未来について語り合う場となっています。

今大会のテーマは、「けっぱれ!精神保健看護 ~今こそ開拓のとき~」でした。

「けっぱれ」は北海道の方言で「頑張れ」という意味ですが、「もっと頑張れ」と励ますだけではなく、「一緒に頑張ろう」「そっと背中を押そう」という温かな気持ちが込められた言葉です。このテーマのとおり、会場ではさまざまな立場の参加者が互いの経験や実践を共有し、これからの精神保健看護について活発な議論が行われていました。

ワークショップへの登壇と、「共同創造」の実践報告

中村は、ワークショップ「精神看護領域における高度実践看護事例検討会―事例を通じて精神看護専門看護師の思考と判断のプロセスを可視化する―」においてファシリテーターとして企画・運営に携わりました。

また、「当事者参画型心理教育の実践―浦河べてるの家における共同創造の試み―」をテーマにポスター発表を行い、当事者と支援者がともに学び、ともに創る「共同創造(コ・プロダクション)」の実践について報告いたしました。

印象に残った「10年後の未来語り」

中村が特に印象に残ったのは、当事者と看護師によるリフレクティングです。テーマは「10年後の未来語り」。

参加者が10年後の未来にいるつもりで語り合う中で、ある当事者の方が、「10年前には『ピアサポーター』という言葉があったけれど、今は使わなくなったね」と話されました。

その言葉には、「患者」「支援者」といった役割ではなく、一人の人として互いを尊重し、自然に名前で呼び合える社会になっていてほしいという願いが込められていました。

この言葉は、トキノ株式会社が大切にしている「その人らしさを支える」という理念そのものを表しているように感じました。支援とは症状だけを見ることではなく、その人が大切にしていることや望む暮らしに目を向け、ご本人、ご家族、支援者がともに未来を描いていくこと。その大切さを改めて考える機会となりました。

平時からの「こころの備え」と、体験に寄り添う支援

木下は、ワークショップ「平時からの災害の備えをともに考える ―Psychological Zero Aid―」の運営に携わりました。

Psychological Zero Aid(サイコロジカル・ゼロエイド)は、災害や事故などの危機的な出来事が起きてから支援を始めるのではなく、日頃から人とのつながりや心の健康を育み、いざという時に自分自身や周囲の人を支えられる力を養っておくという考え方です。

災害への備えというと、食料や水、避難場所などを思い浮かべることが多いですが、「こころの備え」も同じように大切です。地域や職場、家族とのつながりを日頃から築いておくことが、心理的な負担を軽減し、回復への大きな力になることを改めて学びました。

「ヒアリングボイス」から学ぶ支援の姿勢

木下が学会を通して印象に残ったのが「ヒアリングボイス(Hearing Voices)」の考え方でした。

ヒアリングボイス運動では、「声が聞こえる」という体験を単なる症状として捉えるのではなく、その人の体験や人生の一部として理解しようとする姿勢を大切にしています。

私たちも、症状だけを見るのではなく、「その人がどのような思いで暮らしているのか」「何を大切にしているのか」に耳を傾けることを大切にしています。

今回の学びを通して、ご本人の体験や価値観を尊重しながら、その人らしい生活をご本人・ご家族とともに考え、支えていくことの重要性を改めて実感いたしました。今回の学会で得た気づきを、今後のトキノ株式会社での訪問看護の実践へとしっかりと還元してまいります。