【学会参加レポート】「助けて」が言えない若者の心に、私たちはどう寄り添うか

第3回 日本外来精神学会学術総会

2026年6月20日〜21日に横浜にて開催された「第3回 日本外来精神学会学術総会」に参加してまいりました。多くの貴重な講演や議論が行われたなかで、特に私たちが深く考えさせられ、今後の活動の指針にしたいと感じたシンポジウムについて、学びを共有させていただきます。

参画したセッションは、シンポジウム7「『助けて』が言えない 〜生きづらさを抱えた若年女性の心に寄り添う〜」です。


急増する若年女性の市販薬オーバードーズ(OD)とその背景

今回のシンポジウムのなかで、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦先生のお話が印象に残りました。近年10代の中高生女子の間で急増している「市販薬のオーバードーズ(過量摂取)」の深刻な現状が報告されました。

現在、日本の自殺率は全体としては減少傾向にあるものの、若い女性の自殺者数は増加傾向にあります。そして、自傷行為や自殺未遂で救急搬送されるケースの多くに、ドラッグストア等で身近に手に入る市販薬のODが見られるそうです。

未成年であっても購入しやすく、「市販薬だから安全」という誤解が根強い一方で、大量摂取は強い依存や中毒を引き起こします。しかし、これは単なる「薬物の問題」ではありません。背景には、虐待やトラウマ、孤立、そして「誰にも助けを求められない」という深い絶望があり、若者たちは心の痛みを一時的に麻痺させるための「自己治療」として薬に頼らざるを得ない状況に追い込まれています。

「モノの規制」ではなく「背景にある痛み」に目を向ける

松本先生のお話のなかで特に胸に刺さったのは、「販売規制という『モノの管理』だけで捉えてはいけない」という指摘でした。

薬を手に入りにくくしたとしても、彼女たちが抱える根本的な生きづらさが消えるわけではありません。国や社会の対策が形式的なものに留まり、大人の想像力不足によって機能していない現状のなか、私たち社会全体が本気で若者の痛みに向き合う姿勢が求められています。

今回の学会で得た、最も大切な「気づき」

会場でディスカッションを聴きながら、私たちはこれからの支援や関わり方において、極めて重要となる視点に気づかされました。

  • 「SOSの出し方を教える前に、大人が『SOSの受け止め方』を学ぶ必要がある」
  • 「きれいな言葉でなくていい。『しんどいよ』という一言が、もう立派なSOSである」
  • 「『ODをやめろ』と頭ごなしに言うよりも、安心してSOSを出せる関係性が先」

私たちはつい、悩んでいる人に対して「もっと早く相談してくれたらよかったのに」「いつでもSOSを出してね」と言ってしまいがちです。しかし、本当に追い詰められている人は、周囲を信頼できず「助けて」の4文字が言えません。

行動だけを否定するのではない、「それほどまでに辛かったんだね」という痛みを、まずはそのまま受け止めること。そして、弱音を吐いても見捨てられないという「安心感」を地域や社会の中に作っていくことこそが、今求められている支援の本質だと強く実感しました。


おわりに

今回の学会への参加は、私たちにとっても、日々の業務や関わり方を改めて見つめ直す大変貴重な機会となりました。

生きづらさを抱える方々が、孤立することなく「しんどい」とこぼせる場所であれるよう、これからも私たちは専門性を高め、温かい視点を持って寄り添い続けてまいります。

当日ご登壇された先生方、そして貴重な学びの場を提供してくださった学会関係者のみなさまに、心より感謝申し上げます。