第35回 日本小児看護学会学術集会
去る7月5、6日に仙台にて開催された第35回 日本小児看護学会学術集会にて口演発表のため、中村、岡本、小澤で参加してきました。テーマは「臨床看護教育におけるAI活用の効果に関する文献レビュー -AIを用いた実践的教育-」でした。AIへの関心はやはり高いようで「AIの限界と人の活かし方について教えてください」という鋭い質問もいただきました。
学会で取り扱われているテーマを概観すると「医療的ケア児と家族への支援」「 ヤングケアラー/子どもを支える家族支援」「 小児看護と教育の連携・現場での困難と工夫」というラインナップが並び、精神科訪問看護とも重なるものが多かった印象です。
講演も充実しており、大人の脳トレでおなじみの川島隆太先生の教育講演での「Zoomでのコミュニケーションは共感で使われる脳の部位が使われていないため、真の共感には至っていない」「スマホゲームを2時間して勉強も2時間した子供の平均得点よりも、ゲームも勉強もしない子供の平均得点が高い」という驚くべき研究報告に、発達期の子供の脳に対するスマホ、タブレット、ゲームのの影響を聞きドキッとしました。
黒田先生の主にマウスを使った実験では哺乳動物の実子、非実子に対する攻撃性についても言及され統計的に見ても非実子に対する攻撃性は強くなるとした一方、実子であってもサポートを受けられない、パートナーが入れ替わるなど条件が重なることで攻撃性が強くなるというお話しが強く印象に残りました。最終的に虐待を繰り返さないためには、「子どもを守ること」と「親を支えること」を両輪として進めるアプローチが求められるということで、養育者に対する社会的なサポートの充実が虐待の連鎖を断ち切る鍵であると締めくくられました。
医療や研究者ではないのですが、元 石巻市立雄勝中学校 校長であられる佐藤淳一先生の講演はとても印象に強く残っています。東日本大震災で甚大な被害を受けた教育現場で、「元に戻す」のではなく、ゼロから再生させる教育の意義を語っておられました。混乱と喪失の中にあった子どもたちが、仲間と共に前を向き、再び学びに向かう姿、その子供たちを守り抜くために「自分に何ができるか」を問い続け、支援の輪を広げていきながらついには子供たちとゼロからの東京、京都の修学旅行を実現し、さらにはドイツにまで招待されたエピソード、そして卒業を前に子供たちから先生に送られたメッセージには言葉では言い表せないほど感慨深い衝撃を受けました。
今回が初めての参加でしたが他領域での学会にも精神と通じるところが多分にあること、また違いを確認することで自分の立ち位置を再確認できること、最新の知見に触れることで自分の実践に活かせるものがあることなど発見の多い学会でした。